俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
もう何も考えたくない。
就活戦線で胃潰瘍になった時よりも精神的にくる。
事実上の左遷みたいなもの。
ロンドンやワシントン支局の報道特派員に、というのならば栄転だけれど。
ジャーナリストを目指しているわけではないし、スポーツ実況を得意としているわけでもない。
私はエンタメの最前線で、最新の情報を発信したい。
だから、バラエティ番組でバンジージャンプやスカイダイビングを無茶ぶりされても潔く飛んだし、『資格チャレンジ』という番組で、缶詰め生活をして資格を取得するという、アナウンサーでは試みないようなこともやって来た。
その資格チャレンジで、100問全問正解で『ビール1年分』が貰えるという『日本ビール検定』で全問正解で1級を取得したり。
伊賀の歴史や文化、そして忍術について問われる『伊賀学検定・上級』にも合格して、無期限で伊賀流忍者博物館などの指定された観光施設が無料で利用できる権利を取得したりなど。
番組を盛り上げるために、幾度となく体を頑張ってきたつもりだ。
地域の情報を届けることも、視聴者目線で色んなことにチャレンジすることも。
与えられた仕事をチャンスとして捉えてきただけなのに。
出向か、フリー転向か、転職か。
今、人生の岐路に立たされている。
手元の用紙に視線を落とす。
F1GPは、全世界のサーキット(20箇所強)をぐるっと周回する日程になっているようだ。
英語は多少話せるけれど、超がつくほどの方向音痴なのに。
1年の大半を海外で過ごさなければならないだなんて…。