俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う


「本当に感謝の気持ちでいっぱいです」
「フッ、……礼ならベッドの上で」
「もうっ」
「そろそろ2人目を考えてもいい頃だろ」
「へ?」
「再発の恐れもほぼないって神坂医師が」
「っっ…」

 再発した場合のことを考え、ずっと避妊してくれている彼。
 また命の選択を迫られるかもしれないからだ。

「もう1人欲しいの?」
「1人と言わず、2人でも3人でも俺はウェルカムだけど」
「えっ」
「とりあえずは、羽禾に似た娘でもつくるか」
「っっ」

 スッと腰を抱き寄せる彼。
 有無を言わさず唇が奪われる。

「んっ……明日、テストドライブがあるって基さんがっ」
「おい、随分と余裕だな」
「ふぇっ?」
「俺のキス拒否って、他の男の名前を口にするとはな」
「……」

 しまった。
 目が笑ってない。

『本気にならない男』だなんて、誰がつけたのよ!
 どう見たって、絶対的王者で君臨したいタイプじゃない!

「今夜は抱き潰すから、覚悟しろ」
「きゃっ………ンッ…」

 軽々と抱き上げられた体は、少し乱雑にベッドの上に下ろされた。
―――これってデジャヴ?

「何ポカンとしてんだよ?」
「いや、……何だか、初めての夜と似てるなぁと思って」
「あ?……フッ、残念だな。あの時は手加減してやったが、今夜は一切手加減なしだ」
「ッ?!……んっ」

 F1ドライバーはピットイン指示がない限り、ハイスピードで走り続ける。
 『タイヤむき出しの1人乗りオープンカー』なんて誰かが言ってたけど…。
 
 フルスロットルな彼の愛は誰にも止められない――。

~FIN~
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