俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う

 ナンパ男に掴まれていた手首が振り払われ、別の男性によって掴まれた。
 何事?と思い、視線を持ち上げると。

「ん゛っっ」
「あんた日本人?」

 耳元に呟かれた言葉は、聞き慣れた日本語だった。
 それもそのはず。
だって、彼は……つい数分前にガン見してしまった司波 瑛弦だ。

「俺に抱きつけ」
「へ?」
「いいから、言われた通りにしろ」
「……」

 仕方なく、言われるままに瑛弦に抱きついた。

「Sorry Gregg.」(グレッグ、悪いな)
「Oh, man! Tut!」(なんだよっ、チッ)

(グレッグ?……あ、女を喰い散らかす男!)

 西野から忠告を受けていたメンズ2人!
 至近距離で見た彼らは、どちらも超イケメンだ。

 グレッグはお洒落に手入れしている顎髭が特徴で、猛獣的なワイルドさがある。
 司波は、つい数分まえの妖艶な雰囲気と違い、クールさが際立っている感じで、モテ男の代名詞みたいな雰囲気だ。
これは相当モテるだろうな。

 そんな色男をまじまじと見つめていると。

「アンタも、キスして欲しいの?」

 予想だにしていない言葉が降ってきた。

(さっき、濃厚なキス現場をガン見していたからだ)

 瑛弦に巻き付けていた腕を引き払い、テーブルの上に置いたシャンパンを手に取る。

 こんなチャンス、二度とないだろう。
 天国か、地獄か。
できることなら、地獄行きを希望する。

「随分と自信があるのね」
「……」
「私を満足させられる男は、そうはいないわよ?」
「フッ…」

 生まれて初めての煽り行為。
自分の口から出たとは思えないフレーズに、自分自身が一番驚いている。

「じゃあ、俺が啼かせてやるよ」
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