俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
パーティー会場とは別の超高級ホテルの高層階に連れて来られた羽禾。
フロントを通さないところを見ると、ホテルコンドミニアムのようだ。
入口ドアが開き、室内に腕を引き寄せられた次の瞬間には、唇が塞がれていた。
少し前に金髪美女が酔いしれていたキスを、今は自分がされている。
「っ…」
何これ。
執拗に求められ、応えるだけで精一杯。
それでいて、蕩けるような甘い疼きが何度も襲ってくる。
こんなキス、したことがない。
次第に頭がボーってして来て、彼のジャケットを無意識に掴んでいた。
すると、ふわっと体が宙に浮かび、シトラスグリーンの香りが仄かに香る。
「んっ……」
滑らかな質感のシーツに埋もれるように、抱きかかえられていた体が少し乱雑に下ろされた。
「止めるなら、今のうちだぞ」
艶気のある低めの声音が鼓膜を掠める。
ベッドに放るように乱暴にした割には、気遣ってくれているようだ。
真っ暗な室内に、夜の摩天楼を彩る宝石のような煌びやかな灯りが窓越しに差し込む。
その艶美な光が彼の頬にかかり、彼は射貫くように私を見下ろした。
「自信がないの?」
「あ?……フッ、じゃあ遠慮なく」
余裕と言わんばかりに薄い唇の端がキュッと持ち上がり、彼は上着を脱ぎ捨てた。
シャツ越しでも分かるほど鍛え抜かれた体躯に、思わず見惚れてしまう。