俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
**

 パーティー会場から拾って来た女は、見た目はクールで上品そうな顔立ちなのに、ベッドの上では初心な反応を示し、なのにそれ以外の言動はコールガールのような夜の顔を覗かせる。

 気持ちよさそうに寝入る彼女の顔をまじまじと見つめる。

 艶やかな長い髪。
 吸い付きたくなるような綺麗な首筋。
 形のいい耳。
 煽情的な色気のある唇。
 しっとりとした落ち着いた声音。
 そして、……物憂げな瞳。


 女であれば、誰彼構わず喰い散らかすグレッグと違って、俺はある程度品定めをする。
 如何にもモデル気質な美人で、その場限りの情事を割り切れる女。

 何故だろう。
 いつものように品定めしていたはずなのに。
今まで挑戦して来なかったコースに迷い込んでしまったみたいで。

 日本人にしては、かなりの美人だと思う。
細身の体なのに、曲線的なメリハリのあるボディに思わずそそられてしまう。

 プールサイドで見たこの女の瞳が脳に焼き付いている。
ただ単に男を漁っていたようには思えない。

 俺を誘惑してくる女の瞳は、いつだって女豹のようなギラついた猛獣のようで。
 キスを強請ってくる女の顔は、いつだって俺を支配したいという情欲が孕んでる。

 だけど、この女は……。
この世の終わりみたいな絶望感を瞳の奥に秘めていて。
今にも命の炎を自ら消したがっているような、そんな表情だった。
< 27 / 180 >

この作品をシェア

pagetop