俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
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 目覚めると、味わったことのない倦怠感に襲われた。
 自分がとった行動が蘇る。

(あんなに誰かを激しく求めて乱れるだなんて…)

「まだ2時間しか経ってないよ」
「ッ?!」

 わざと耳元に呟かれた。

「寝てないの?」
「イイ女が目の前にいるのに、寝れねーだろ」
「……フッ」

 3時間以上にも及ぶ行為をしたのに、まだし足りないのだろうか。
それとも、私が手練れていないと分かっていて、わざとカマをかけて来ているのか。

 長居は危険すぎる。
ボロが出てしまいそうで、羽禾は焦った。

「帰るわ」
「まだいいだろ」
「生憎、あなたと違って仕事があるの」
「……あっそ」

『本気にならない男』
去る者は追わず来る者は拒まずのスタンスなのだろう。

 羽禾は脱ぎ散らかした服を拾い集め、手早くそれらを身に着けた。

 室内の照明はついてない。
窓から差し込む明かりを頼りに、バッグの中から取り出したファンデーションのコンパクトミラーを覗き込む。

 深夜にタクシーに乗り込むだけでも危険なのに、髪やメイクが乱れていたら危険すぎる。
 羽禾は月明かりを頼りに髪を手櫛で直し、軽くティントを乗せる。

「名前は?」

 あぁ、そうだった。
満足させることができたら、教える約束だったわね。

「はい、ね」
「……韓国人?」
「さぁ?」

 来年になれば、嫌でも顔を合わせるようになる。
その頃まで、私のことなんて憶えているとは思えない。

「それなりに、楽しませて貰ったわ」

 羽禾は、振り返ることなく部屋を後にした。
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