俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う


「寒くない?」
「大丈夫です」
「気候に体が慣れるまで寒く感じると思うから、遠慮なく言ってね」
「はい」
「印が付いてた荷物は言われたように荷解きしてあるけど、残りのも手伝うから遠慮なく言って」
「ありがとうございます。助かります」

 社員寮に到着した羽禾は、割り当てられた部屋に案内され、残りの荷物を解き始めた。

「あ、それと、……明日は『Blitz』のベース内を見学するから、動きやすい格好で」
「スーツじゃなくていいんですか?」
「練習場にお邪魔するだけだから、畏まらなくて大丈夫よ」
「そうなんですね」
「今週は『Blitz』のベース基地でF1の基礎を学んで、来週からは他のチームのベース取材だからね」
「はいっ」

 スカイテレビ(STV)はF1GPシリーズの全放映権を獲得している。
そのSTVの親会社が、日本の最大手航空会社・全日本スカイジェット航空(ASJ)。
しかもASJは、ドイツの航空機エンジンの会社(現在は高級自動車メーカー)が主体の『Blitz(ブリッツ) Racing(レーシング)』(F1レーシングチーム)の主力スポンサー会社でもある。

 【 STV ← ASJ → Blitz Racing 】という関係性。

 ASJは、スカイラインと呼ばれる世界最大の航空連合に加盟していて、加盟会社による就航国は190国を超える。
 スカイテレビの社員が海外出張の際には、このスカイラインに加盟している航空会社を常時利用しているのだ。
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