俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
精悍な眼差しが柔らかく細められ、首筋に落とされた唇がゆっくりと輪郭をなぞるように這い下りてゆく。
今まで経験して来た行為は、一体何だったのだろう。
こんなにも優しく触れられることなんて、今まで一度もなかった。
「んあっ…」
初めて感じる淫らな痺れの波に抗えそうもない。
次々と押し寄せてくる甘い誘惑が、羞恥の衣さえも剥ぎ取ってゆく。
「脱がして」
「ふぇっ……?」
あぁ、私が彼の服を、ね。
私の手を掴んだ彼は、自身のベルトにあてがった。
Yシャツのボタンを外したことくらいはあるけれど。
男性のベルトを緩めるだなんてしたことがないのに。
けれど、そういうことに慣れた女だと思われているはず。
求められる濃厚なキスに応えながら緊張する手でベルトを緩め、手練れた女を演じる。
最初で最後、今夜だけ。
私はアナウンサーではなく、女優になるんだ。
自分自身に何度も言い聞かせ、彼の首に腕を巻きつけた。
敏感な部分をいとも簡単に暴かれ、あられもない嬌声と熱い吐息が溢れ出す。
お腹の底から疼く感覚と、背中をせり上がる甘い痺れに酔いしれる。
「名前は?」
少し低めの甘い声音が鼓膜を揺らす。
「……秘密」
「面白い女だな」
「……満足させてくれたら、教えてあげる」
「ハッ、…上等だ」
アップバングに固められた髪が頬を掠め、体の奥深くに熱いものが穿たれる。
すでに愉悦の波を何度も味わっている羽禾の体は敏感すぎて、僅かな動きでさえ、震え上がるような刺激に襲われた。