俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
【第4戦】ウェット時の対応
「羽禾ちゃん、それだけで足りる?」
「はい、大丈夫です」
「遠慮しなくていいよ~?瑛弦、リアルセレブだから」
「おいっ」
(知ってます。ドバイのあのホテルスィートは10億は下らないと思うから)
「Hi !! Order whatever you like!」(みんな~、遠慮しないで注文してね~)
「ふざけんなっ!」
瑛弦のIDカードを手にしている基は、食堂内にいるスタッフらに声をかけた。
そして、次々とスタッフの精算を瑛弦のカードで勝手にしている。
「俺らのおかげで稼げてんだから、たまにはいいだろ」
「……」
「これくらいでチームの士気が上がるんなら安いもんだ」
「チッ……まぁ、いいけど」
(いいんかい!)
思わず心の中でツッコミを入れてしまった。
日本人ドライバー、日本人スタッフ多め、日本の大企業が主力スポンサーということもあって、食堂のメニューにはうどんや蕎麦などもある。
イギリスは今カレーブームらしく、5種類ものカレーがあるのには驚きだ。
「あいつは放っておけ」
「へ?」
「あーいうのが好きなやつだから、暫く帰って来ないから」
「……あぁ、はい」
「そうそう、彼チャラくてアクション派手めだけど、害はないから」
「……そうなんですね」
令子と瑛弦に連れられ、食堂の一角のテーブルにつく。
令子はキーマカレー、瑛弦はざる蕎麦セット、羽禾はチキンサラダサンドにした。