俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
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「毎日お忙しいのに、すみません」
「大丈夫だよ、オフシーズンだし。令子さんは?」
「今日は会議があるみたいで」
「じゃあ今日はオフィス内デートだ♪」
「……」

 正門から中に入り、本館1階の受付で手続きをすると、毎日ファクトリーから加賀谷さんが迎えに来てくれる。
 来場者用のIDカードでは入れない建物も多く、こうして毎日私の取材という名の勉強に付き合ってくれている。

「今日で最後だっけ?」
「最後というわけではなくて、来週から他のチームの取材をすることになってて、全チームの取材が終われば、またこっちに戻って来ます」
「なるほどね。じゃあ、しっかり敵情視察よろしく」
「っっ…」

 一応、『Blitz』と同じようにASJの傘下にいるSTVだから、他のチームに肩入れするつもりはない。
だけど、取材の鉄則というものがある。

 取材の相手先(取材源,ニュースソース)を相手の承諾なしに漏らすのはご法度だから、悪用するつもりはない。

「今日は今まで教わったことのおさらいをしてもいいですか?」
「おっ、中間試験?じゃあ、合格点取れたら、お願い事1つ聞いてくれますか~?ってやつだ!何おねだりされるんだろう?ワクワク♪」
「……」

(この人のノリには本当についていけない)

「デートはともかくとして、他のチームの取材に行って恥はかきたくないので、そこはちゃんとお願いします」
「真面目ちゃんだなぁ~」
「会社の看板に泥は塗りたくないので」
「はいはい、分かったよ」
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