俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
「下向きに発生する空気の力……ですか?」
「正解♪要するに、F1のマシンは、エンジンのパワーでタイヤを強く地面に押し付け前進する。それにより走行時に車体にかかる空気抵抗を下向きにすることでよりマシンがより安定するってこと。船で言ったら、ホバークラフトも似たような原理」
「ホバークラフト!それなら、分かりやすい!」
「だろ?俺って天才」
(冗談で言っているのだろうが、本当に天才だと思う。本で学んでもここまで簡単に理解できないもの)
「空力を発揮するにはダウンフォースが必須だけど、下向きの空気抵抗ばかりではなく、後方に流す気流やサイドに流すのも必須だからね」
「ストレートだけでなく、コースにはカーブやバンク(傾斜)やアップダウンがあるからですよね」
「おっ、よく分かってんじゃん」
ポンと頭を一撫でされた。
(こういうスキンシップ、本当に要らないのに。だけど、今のところ全問正解なのは素直に嬉しい)
「元に戻るけど、ダウンフォースと空気抵抗の最適値が空力設定ってことね。セッティングで一番重要なこと」
「メモリます!!」
「ちなみに、ドライバーによって好みが違うから、同じマシンには仕上がらないんだよね」
「え?」
「コーナリングが得意なドライバーもいれば、前にライバルがいると実力が発揮されるドライバーもいる」
「……」
「ちなみに前者がポールで、後者が瑛弦ね」
「ッ?!!」
「ポールのマシンはグリップ(タイヤの設置具合)高めで、瑛弦のマシンは都度修正しながら最適に仕上げるタイプ」
「……極秘情報ですね」
「羽禾ちゃんを信用してるから話すんだよ。スパイ行為は厳禁だからね♪」
「っっ……分かってますよ!」
(これは絶対試されてる……。まぁ、今話されたことが本当かどうかも私には分からないけれど)