俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う

「うわぁ~、こんなにお土産買って来なくていいんだよっ」
「令子さんには沢山お世話になってるので」
「本当に気にしなくていいのに…」

 約3週間ぶりにイギリス支社の社員寮に戻って来た羽禾。
 日本にはもう2年近く帰ってないという令子のために、沢山のお土産を持ち帰ったのだ。


「再来週に西野さんがこっちに来るそうです」
「そうなの?」
「はい」
「………あーでも私、スキー・スノボーの大会が入ってるわ」
「えぇ~」
「近場なら顔出そうかと思ったけど、開催地がカナダたから日帰りでってわけにはいかない。残念だけど、西野くんに宜しく言っといて」
「……はい」

 令子はスマホでスケジュールを確認し、苦笑した。
 
 この時期はウィンタースポーツのオンシーズンということもあり、毎週末のようにどこかしらで大会が行われている。
その大会の放映権があるものは、撮影のために現地入りするスタッフのフォローをするのが令子の仕事。

「あっ、そうだ。明日、マシンの仕上がり具合をチェックするらしくて、サーキット走行するって」
「『Blitz』の敷地内にあるサーキットで、ですか?」
「そう、あそこで」
「私も見学できるんですかね?」
「羽禾ちゃんに伝えてねって言われたくらいだから、大丈夫よ」
「うわぁ、楽しみ〜」

あの日以来だ、彼に会うのは。
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