俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う

「これがロケ先で、松田(まつだ)(カメラマン・38歳)と木島(きじま)(音響・42歳)のコンビが担当だから安心して行って来い」
「やったぁ!松木コンビ(松田と木島)なら沢山フォローして貰える!」

 ロケ班と言えば『松木コンビ』と言われるほど、ベテランのスタッフだ。
しかも、食レポでも事故現場でも、テンパる新人アナウンサーを優しくフォローしてくれることでも有名なコンビ。

 高津から味覚狩りロケ(みかんとさつまいも)の詳細が記されている用紙を手渡された。

「では、着替えて行ってきます!」

 羽禾は、ロッカールームへとその場を後にした。

***

 房総半島にある、とある農園。
 10月上旬から12月中旬頃まで、食べ放題でみかん狩りが楽しめるとあって人気スポットでもある。
都心からのアクセスも良く、食べ放題なのに600円とコスパも良く、学生カップルのデートコースでも有名らしい。

「笹森ちゃん、逆光になるからこっちの方のみかんで」
「はーい」

 カメラマンの松田に指示され、カメラワークに良さそうな位置に実る木を探す。
たわわに実っていても、カメラ越しだと実際に見ているのとは違うことがあるからだ。
 視聴者に、如何に味覚狩りの楽しさを伝えられるか。
 リポートする上で、一番重要なことだ。



「笹森ちゃん、良いのが撮れたよ。次もヨロシクね」
「こちらこそありがとうございました。お疲れ様です」
「お疲れさーん」

 18時過ぎに都心へと戻って来た羽禾は、駅前で車から降ろして貰った。

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