俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う

 普段は入ることができないサーキット内に足を踏み入れることができる一般来場者向け『サーキットウォーク』がある。
 歩いてサーキット内をぐるっと1周するものだが、観覧席からは見れないコーナーのタイヤ痕だったり、動画や写真では分かりづらいコースの傾斜など、実際歩いてみて沢山の事実を知ることができる。

 そして一番の目玉は、観覧席の真下にあるピット内(作業している様子)を見学することができる。
お目当てのチームとマシンを間近で見れるとあって、ピット内はお祭り騒ぎだ。

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 中継車でスタッフが編集作業をしている間、『Blitz』の様子を見に来た羽禾。

「これからサーキットウォークですか?」
「おっ、女神降臨♪俺と、サーキットデートは如何ですか?」
「……後方から見学させて頂きます」

(今日も絶好調のようだ)

 加賀谷流の挨拶を軽くかわしながら、他のスタッフに挨拶する。

「Here we go!」(さぁ、行こう)

 加賀谷監督の掛け声で集まっていたドライバー2人とレースエンジニアリングのクルーがコースへと歩き出した。

 監督を中心に、ドライバーとエンジニアで情報の交換をしているようだ。
 コースレイアウトは同じでも、新しい縁石があったり、舗装し直されている箇所を細かくチェックするのが目的。

「私のことは気にせず、お仕事なさって下さい」
「大丈夫だよ」

 クルーとの距離が少し開いていて、本当にサーキットデートしているみたいだ。

(あっ……)

 クルーから少し離れて歩いている羽禾達に視線を寄こした瑛弦と一瞬目が合った。
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