俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
フリー走行があるGP初日(木曜日)は、エンジニアにとって一番忙しい日になる。
開幕戦のバーレーンGPのフリー走行1回目は、14時30分開始。
エンジニアたちは3時間以上前にサーキットに入り、マシンのチェックを開始する。
フリー走行1回目が1時間半、2回目(18時~)も1時間半と初日は3時間しか走らないのに、エンジニアたちが作業を終え、ホテルに戻るのは約17時間後。
マシンが正常に機能しているか。
予想していた気温や路面状態に合わせた空力やタイヤの状態が合っているか。
気温が1度違えば、タイヤの減りは早くなるし、エンジンの冷却機能にも付加がかかる。
風量によっても然り。
同じコースレイアウトでもマシンの設定は1つとして同じものはない。
「珈琲の差し入れでーす」
「おぉ~、愛しの羽禾ちゃん♪」
ホテルへと戻る前に、羽禾はガレージに顔を出した。
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GP2日目には、フリー走行3回目(15時~)が行われる。
この時点でマシンがほぼ仕上がっていないと、ドライバーは自信をもって予選を迎えることができない。
しかも、フリー走行3回目は1時間しかない上、予選と決勝で使用するタイヤを温存するために計算してタイヤを選択しなければならない。
『How is the front wing?』(フロントウィングの調子はどう?)
『I don't know! You'll reve to tell me.』(知らんがな!お前が俺に教えろよ)
『Oh~ sorry sorry.』(あー、ごめんごめん)
残り時間10分を切っていて、基との無線のやり取りにキレ気味の瑛弦。
けれど、これはよくあること。
ドライバーは周回を重ねるごとに己の限界値に近づこうとしているからだ。