俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う

 F1のマシンは、電子制御の塊とも言える。

 マシンの状態は常時コントロールパネルに表示されるが、時速300kmを超えるスピードで走行しているドライバーには、細かな数値を目で追うのは不可能に近い。

 ステアリング(ハンドル)はA5サイズほどの大きさで、中央上部に表示パネルがあるが、それ以外の部分に約20個以上のボタンが搭載されている。

 ブレーキバランスの調整、後車に雨用タイヤを履いていることを通知するボタン(スピードが遅い)、ピットレーン制限速度リミッター(通常80km/h、超過するとペナルティー)、無線の切り替えボタン(通話時は押す)、ドリンクボタン(押している時だけパウチから流れてくる)など、他にも小さなボタンが所狭しと並んでいる。
 

 車体に埋め込まれている空気圧を測るチューブでデータを取り、それをダウンフォース換算して、風洞実験で取られたデータと比較し、車高は0.01㎜単位で調節している。

 車体の下に取り付けられている『プランク』と呼ばれる長方形の板は、厚さ10㎜と決められている。

 レギュレーションでは1㎜の誤差が認められていて、レース終了後に計測し、1㎜以上すり減っている場合は、その厚さによりタイムペナルティが加算され、レース後の順位が入れ替わることもある。

 車体は低ければ低いほどダウンフォースが高まり、グリップがよくなりマシンの限界値に近づくが、攻めすぎてもよくないし、保守的すぎると当然結果がついて来ない。

 0.01㎜、0.001秒を競う世界だ。
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