俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
「皆さん、こんにちは。『Sky J-sports』の時間です。今年のF1GPシリーズのキャスターを務めます、笹森 羽禾です。普段は見ることができないF1の裏事情やリアルタイムでの現地の様子を皆様にお届けしたいと思います。それでは、昨日行われました、フリー走行の様子をご覧下さい」
大会2日目の19時から行われる予選に先立って、前日に行われたフリー走行の様子が放映された。
一般来場者用の観覧席の上部(2階席)に実況席とパドッククラブと呼ばれる、富裕層の人が観覧するための部屋がある。
スカイテレビは全放映権を取得しているため、全GPのサーキット会場にあるメディア向けの個室が割り当てられている。
『Sky J-sports』では、スカイテレビアナウンサーの西野 透と元F1ドライバーの川端 勇悟が今年も実況解説を担当する。
「笹森、聞こえるか?」
「はい」
「予選前の緊張感が漂うピットの雰囲気を流したいから、許可が出てる『Blitz』と『Raymond』の様子を頼む」
「了解です」
センターフロント(正面玄関)前から撮影クルーと共に指示されたピット裏へと急いで向かう。
羽禾は、ピット内の様子を中継しながら、事前に収集した情報を所々に盛り込むのが担当だ。
(あ、まただ……)
ズキっとした痛みが頭を襲い、くらっとした軽い眩暈が羽禾を襲う。
「倉林さん(カメラマン・47歳)、『Raymond』のピット裏の映像を先にお願いします」
「了解」
一昨年と去年、2年連続でコンストラクター1位を獲得している『Raymond』は、ドライバーズチャンピオンのグレッグ・クーパーが所属しているレーシングチームだ。