俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
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「司波さん、調子悪いんですか?」
「いや、昨日の時点ではむしろ調子良かったんだけど」

 予選1回目(Q1)は全ドライバー20人で行われるタイムアタック。
 18分間行われ、その時間内であれば、何周でも走ることができる。

 足切り5人がふるい落とされ、予選2回目(Q2)は残った15人でのタイムアタックとなる。

 このQ1で、瑛弦は20人中13位とギリギリの予選通過だった。

「ポールはQ1で6位とタイムもかなりいい。さすがだよ」

 予選のピット裏の様子を見て廻っている羽禾は、ケビンの姿を見つけ声をかけた。
 ケビンは公式プロモーションの担当で会場に来ているらしく、心配そうな表情で瑛弦を見つめている。

 インターバルはたった7分しかなく、あっという間にQ2の開始時間となってしまった。

「ケビンさん、私他のチームの撮影に行ってきます」
「頑張って~」

 本当は羽禾もピット裏で見守りたかった。
けれど、こればかりは仕方ない。
仕事をするために来ているのに、それを放棄したら本末転倒だ。

 他の国の撮影班も慌ただしくピット裏行き交う。
 ケーブルや照明器具などが邪魔にならないように、お互い気を遣いながらVTR用の細取りを撮影する。

 人の調子をどうこう言える立場にない。
 自分だって収録日にこうして万全でなくても仕事をしているのだから。

「頭痛?」
「……あ、はい」
「海外飛び回ると職業病だよね~。俺らの世界にようこそだよ」
「アハハッ、そうですよね。時差あっての海外ですもんね」

 無意識に頭に手を当てていた羽禾は、倉林カメラマンと時差ボケトークを交わしながら撮影に挑んだ。
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