俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う


(クソッ……俺は何に苛ついてんだ)

 Q1で情けないタイムを出した瑛弦は、ピットに停車した状態で、どうにかして気を落ち着かせようとしていた。
 
 Q3に進出するためには、Q2で上位10台に残らなければならない。
 決勝のグリッド位置(スタート位置)をできるだけポールポジション(先頭)に近づけるには、Q3は新品タイヤでアタックし、好タイムを叩き出すのが鉄則のようなもの。
けれど、Q3に進出できなければ何の意味もない。


「New hard tires.」(新品のハードタイヤでアタックさせてくれ)
「The advantage will be gone.」(アドバンテージがなくなるぞ)
「After the Q2, the final.」(Q3は捨てる)
「What did you say?」(お前、正気か?)
「Because we'll win the finals.」(決勝で勝てばいいんだろ)
「……OK.New hard tires,Q2」(分かった。後で文句言うなよ)
「Thanks.」(言わねーよ)


 瑛弦は捨て身の策でQ2をトライすると、無線で伝えた。

 チームとしては、Q2はミディアムタイヤでトライし、Q3でよりいい位置でスタートを切るのを予定したプランだった。
 
 だから、他のチームなら絶対にチームの意向としてドライバーを説き伏せにかかるところ、『Blitz』では度々このようなシチュエーションが起る。
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