俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う

 ここ数か月、色んなことがあり過ぎて正直心穏やかに過ごせたことがない。
 常に緊張の連続で、部屋に1人でいても無意識に仕事のことを考えてしまっている。


「ドバイでの件は置いておくとして、羽禾はさ、結構貞操観念が高いでしょ。簡単に手を繋いだりハグしたりするのも嫌悪感持つくらいにさ」
「……そうかも」
「そんな羽禾が、恋人に裏切られて身も心もボロボロの状態でそれをどうにかしたくて、ドバイで彼に縋ったんでしょ?」
「……」
「甘えることすらできない羽禾が、自分から男性に声をかけたこと自体驚きだけど。素の自分を曝け出しても気になってる時点で、もう彼のことを好きになってるんじゃない?」


 芙実の言う通りかもしれない。
 西野さんにだって元彼のことは知られているが、だからと言って西野さんに洗いざらい話せるかと言ったらそれは無理だ。

 上司だからというのもあるかもしれないが、イケメンという括りにしたとしても、西野さんと恋愛はできそうにない。

「元彼と2年過ごした中で、一度でも怒ったり泣いたり感情を彼にぶつけたことある?ないでしょ」
「……」
「羽禾はさ、口に出さないけど愛されたい願望が強いから、元彼から好きだと熱烈アピールされて自分も好きだと思い込んでたんじゃないの?」
「え……」
「今までの彼氏もさ、自分から好きになった人いた?いつも受け身で、好きだと言われて付き合った人ばかりでしょ」
「……そう言われてみれば、そうかも」
「それってさ、愛されてると感じることが重要で、相手を本気で好きかどうかは別なんじゃない?」
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