俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う

 マイナースポーツであるF1を少しでも多くの人に知って貰うためには、自分にできることをしらみ潰しにやって行こうと考えたのだ。

 幸いにも、インラインスケートは前にやっていて少し自信がある。
 あとは会社から許可が出るかどうかだ。

「分かった。部長に相談してみる」
「ありがとうございます!」
「小石マップ、意外にもウケがいいしな」
「あれは偶然の産物です」
「そうなのか?」
「はい。バーレーンGPの時に『Blitz』のスタッフとサーキットウォークしたんですけど、意外にもコース上に小石があるのを知って。試しに記録として取っておいたんです。そしたら、サウジアラビアGPのサーキットとは石の色とか種類が全く違うことに気付いて」
「凄いな」
「手書きのコースレイアウトだから見た目が悪いですけど、それが逆に新鮮味があるじゃないですか」
「確かに」
「オーストラリアGPからは、小石だけじゃなくて芝生も毟って貼り付けておきます」
「ハハハッ……楽しみだな」


 スカイテレビのF1サイトのコメント欄に、200件を超えるコメントが寄せられている。

 そのどれもが、『笹森ちゃんが石拾い!』『ドライバー想いで熱い~』『画面では分からないリアル感が伝わってくる』など、好意的なコメントに、上層部の反応がいいらしい。

 転んでもただでは起きなのが羽禾の最大の武器だ。
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