俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
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「おい」
「ッ?!」
「あっっっぶねぇ」

 イギリスに戻った羽禾は、アパートのすぐ近くにある公園でインラインスケートの練習をしていた。
そして、ちょうど水分補給するために休憩していたところに、ロードワーク中の瑛弦が通りがかったのだ。

 瑛弦の声に驚いた羽禾は体勢を崩し、その羽禾を間一髪のところで瑛弦が抱き留めた。

「急に声をかけるから、びっくりしたじゃないですか」
「悪い。……ってか、こんなところで何してんだ?」
「見たら分かるじゃないですか。これの練習ですよ」
「……趣味?」
「仕事です」
「は?アナウンサーって、インラインスケートをやらされんの?」
「これは私が望んだことですけど、バンジーとかスカイダイビングとか幾らでもありますよ」
「マジかよ。……何気に体張ってんだな」
「司波さんには負けますけど」
「……フッ、一緒にすんな」

 1週間ぶりに見た彼は相変わらずカッコよくて、自然体の彼にドキッとしてしまった。

 芙実に言われて気付いた自分の気持ち。
 こうして彼を目の前にすると、改めて実感する。

「ネットの記事、見ました」
「ん?……あぁ、あれか」

 イヤホンのスイッチをオフにした彼は、クールダウンするみたいにその場でストレッチをし始めた。

「オーナーの娘だよ。あの夜はポール夫妻もいたのに、俺らしかいないみたいな写真だったよな」
「でも、助手席に乗せたのは事実ですよね?」
「ん?……あーまぁ、そうだな」
「皆さんでお食事をされたのに、お酒を飲まなかったんですか?」
「あの日は疲れてたから……って何、……嫉妬?」
「………そうだと言ったら?」
「へ?」
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