俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
【第8戦】予選通過?

 3月下旬の木曜日(翌日がオーストラリアGPの初日)。

「今、どこ?」
「ホテルの隣りにある公園にいます」
「目印は?」
「サッカーゴール?芝生のサッカー場があって、子供たちがサッカーしてます」
「分かった、すぐ行くからそこから動くな」
「……はい」

 F1GPの第3戦が行われるオーストラリア アルバート・パーク・サーキットは、メルボルンの中心地から3㎞ほど南に位置していて、半公道(公道+駐車場の一部をコースにしている)のサーキット場だ。

 そのコース会場の隣りにあるホテルに宿泊している羽禾は打ち合わせを終え、翌日から生放送で使用するためのインラインスケートの練習をしていた。
 
 ロードワークスタイルで現れた瑛弦は、イヤホンのスイッチを切り、被っていたキャップを羽禾の頭に被せた。

「見ててやるから、滑ってみ」
「別に転んだりしませんよ」

 テレビ局に入社したての頃、バラエティー番組の企画もので、インラインスケートをプロに教わったことがある。
 元々スケートやスキーが得意なこともあって、すぐに習得できた方だ。

「おぉ~、様になってんじゃん」
「だから得意だって言ったじゃないですか」

 オーストラリアに現地入りしたら、インラインスケートの練習をすることは伝えてあった。
 あの日はあの後、練習どころではなくなったから……。


 『付き合う』という関係性になったもののお互いに仕事が忙しく、漸く今日、あの日以来ゆっくりと会うことができた。
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