俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
「んっ……っ…」
深夜0時を過ぎ。
数時間後にはサーキット場にいるはずの人が、何の躊躇いもなく迸る情欲を注いでくる。
「ぁ……ンッ」
もう何度目か分からない愉悦の波に攫われそうな羽禾は、必死に抗おうと試みるも、それすらも楽しんでいる瑛弦。
羽禾の手首をシーツに縫い付け、羽禾の腰が浮き上がるほどに滾る熱量を何度も穿つ。
ホテルのジュニアスイートに宿泊している瑛弦だが、パパラッチの動向の裏をかき、羽禾が宿泊しているホテルの部屋で熱い夜を過ごしていた――。
*
「なぁ、ドバイで…」
「……」
「自殺しようとか考えてたんじゃないよな?」
「へ?」
漸く解放された羽禾の体は、瑛弦の腕の中でゆっくりと呼吸を整えていた。
思いもよらぬ質問に、羽禾の心臓はドクンと大きな脈を打つ。
「男を漁ってるようには見えなかったし、酒に溺れてるようにも見えなかったから」
「……」
「言いたくないなら言わなくてもいいが、お前を抱く度にあの瞳を思い出しそうで」
目は口程に物を言う。
たった数時間しか過ごしてないのに、心の中を見抜かれていただなんて。
彼には、本当に恥ずかしいところばかり見られている。
だから惹かれたのかもしれない。
今まで誰にも見せて来なかった、本当の自分の姿だから。
「あの夜の少し前に……結婚する予定だった人に裏切られたんです。私の後輩を妊娠させたうえに、私は担当していた番組を降板させられて。その後輩の父親が局の上役で、目障りな私を海外支局に飛ばしたんです」
「は?……それが、これ?(F1GP)」
「……はい」
「マジかよ。さすがに俺でも気狂うわ」