偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
 銀色の猫足スタンドには水色のリボンが飾られ、頂点にはティアラが輝く。

 白いお皿は縁がフリル状に象られ、三段目には小さなサンドイッチが三種二セット、二段目にはバターとジャムとクリームが添えられたスコーンがある。最上段にはチョコケーキと苺ムースとレアチーズケーキが二個ずつ、華やかに装飾されて載っていた。

 茶器もまた白くフリルのようなふんわりした形をしていた。
 店員は丁寧に配膳し、ワゴンを押して帰って行った。

「きれい……」
 朱鳥はスマホで撮り始めた。
 立ち上がって角度を変えて撮っていると、男性のくすくす笑いに気が付いた。
「あ、すみません」
「いいよ、好きなだけ撮って」
「じゃ、遠慮なく」

 朱鳥はスタンドと茶器の位置を変え、通路にしゃがみこんだ。やや煽る角度で青空をバックに写す。……うん、なかなかいい。きれいなケーキ類は隠れてしまうが、雰囲気が良かった。

「写真を仕事にしてる人? 『映え』に命をかけてる人?」
「どちらでもないです」
 ウェブライターとは言いづらかった。なにを書いているの、と問われたときに胸を張って答えられない。

 写真を撮りまくるのはフリー時代のクセだ。たくさん用意して記事に添える。写真を同時に使ってもらえたら報酬が増える。

「もう大丈夫です」
 スタンドをテーブルの真ん中に戻した。
「では、いただきます」
 男性はサンドイッチに手を伸ばす。
< 10 / 58 >

この作品をシェア

pagetop