【書籍化】偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
「お仕事はなにされてるんですか?」
朱鳥は世間話として聞いてみた。
「公務員ですよ。あなたは?」
「事務です」
とっさに嘘をついてしまった。
「じゃ、そのペン型カメラはなんのため?」
言われて、思い出す。カーディガンにつけていたのだ。
「興味本位で買っちゃって。今日初めて使いました。迷子に声をかけるときに不審者だと思われないように」
朱鳥はスイッチを切ってバッグにしまった。
よくカメラだと気が付いたな。カーディガンについているのが不自然とはいえ。
朱鳥は改めて彼を見る。
やっぱりどこかで見たことがある。
彼が前髪を邪魔そうに払いのけ、一瞬、切れ長の目が見えた。
朱鳥は声を上げそうになった。
あの外交官だ。先月、赴任地で幼女を誘拐して外交官特権で逃げた人。全世界から嫌われているワーストワンの男。
エカルダル共和国では日本大使館前に「誘拐犯を許さない」とデモ隊が押し寄せたというし、日本でもバッシングがすごかった。勤め先では航平が記事をたくさん書いていた。
テレビでは外交官特権の特集が組まれ、毎日うるさかった。
外交官特権はいろいろあるが、今回話題になったのは「外交官の身体の不可侵」だ。これは逮捕・抑留・拘禁の禁止があり、だから彼は逮捕されなかった。
日本に戻って来てたなんて。
心臓がどきんと跳ねた。
朱鳥は世間話として聞いてみた。
「公務員ですよ。あなたは?」
「事務です」
とっさに嘘をついてしまった。
「じゃ、そのペン型カメラはなんのため?」
言われて、思い出す。カーディガンにつけていたのだ。
「興味本位で買っちゃって。今日初めて使いました。迷子に声をかけるときに不審者だと思われないように」
朱鳥はスイッチを切ってバッグにしまった。
よくカメラだと気が付いたな。カーディガンについているのが不自然とはいえ。
朱鳥は改めて彼を見る。
やっぱりどこかで見たことがある。
彼が前髪を邪魔そうに払いのけ、一瞬、切れ長の目が見えた。
朱鳥は声を上げそうになった。
あの外交官だ。先月、赴任地で幼女を誘拐して外交官特権で逃げた人。全世界から嫌われているワーストワンの男。
エカルダル共和国では日本大使館前に「誘拐犯を許さない」とデモ隊が押し寄せたというし、日本でもバッシングがすごかった。勤め先では航平が記事をたくさん書いていた。
テレビでは外交官特権の特集が組まれ、毎日うるさかった。
外交官特権はいろいろあるが、今回話題になったのは「外交官の身体の不可侵」だ。これは逮捕・抑留・拘禁の禁止があり、だから彼は逮捕されなかった。
日本に戻って来てたなんて。
心臓がどきんと跳ねた。