偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
 テーブルに並べられたスタンドと軽食、茶器。見るだけでときめき、癒された。味はもちろんおいしかった。目の前の特ダネを忘れるくらいに。こんな情報、みんな知りたいに決まってる。
 だが、ほのぼの動物ニュースで怒られたから提案する勇気はなかった。

 仕事の合間に外交官の幼女誘拐事件を検索した。やはりこの前の彼に似ている。
 イケメンすぎてファンクラブができているという。犯罪者なのに、と苦々しく思う。

 イケメン無罪、と煽るコメントがあった。女はイケメンならなんでも許すと思われるようで腹立たしい。

 あのときの動画を編集長に見せたらなんて言うだろう。よくやった。それとも、もっと面白いもの撮ってこい。

「今さら外交官の記事?」
 振り向くと航平がいた。隣には凛子がいる。
「あなたには関係ないです」
「女ってイケメンが好きだよな」
「当然ですよ」
 くすくすと凛子が笑う。

「男性だって美人が好きでしょ」
 朱鳥は仏頂面で答える。
「それでも犯罪者じゃなあ?」
 バカにしたように笑う航平に、朱鳥はむっとした。
 今に見てなさいよ。特ダネをつかんであっと言わせてやるんだから。
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