【書籍化】偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
 今までの努力を無駄と言われたかのようで、へこんだ。
 だが、恭匡は違う。
 航平といるときよりも楽しい自分に気が付いて、戸惑いとときめきが同居した。


 
 水族館を出ると、夕食まではまだ間があった。
 時間をつぶそうと近くの公園に行くと、幼稚園くらいの男の子が木を見上げて泣きそうな顔をしていた。視線の先には風船が木に引っ掛かっている。

「風船、とってあげられませんか?」
 思わず彼に言っていた。

「さすがにあれは届かないな」
 背の高い彼がジャンプをしても無理そうだ。木登りできたとしても、細い枝にたどりつく前に折れてしまうだろう。

「君が協力してくれたらとれるかも」
「やります。どうしたらいいですか?」
「一緒にきて」
 彼に手をひかれ、男の子に近付く。

「このお姉ちゃんが風船をとってくれるからな」
 声をかけられた男の子は泣きそうなまま朱鳥を見た。

「確約しちゃうなんて」
「肩車するから、乗って」
「は!?」
 朱鳥は驚く。
 自分はワンピースだし、肩車ということは彼の肩に乗るということで。
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