偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
 彼はすっとしゃがんで朱鳥を待つ。
 男の子は不安そうに様子を見ている。
 ——仕方ない。
 朱鳥は覚悟を決めた。

 スカートをたくし上げ、彼の肩に両足をかける。
「しっかりつかまって」
 言われて、彼の頭にしがみつく。彼は朱鳥の両足を持って慎重に立ち上がった。

 不安定に揺れて、怖い。足が露出するのも、つかまれているのも恥ずかしい。頭に抱きつくようなのも恥ずかしい。彼の整髪料の匂いに鼓動は早くなる一方だ。

 あっという間に普段の視点を超えて、風船が迫った。
「とれそうか?」
「あと少し」
 必死に手を伸ばす。
 ぎりぎりで、なんとか指にひっかけることができた。

「とれました!」
「じゃあ下ろすから、気を付けて」
 また彼にしがみつくと、ゆっくりと彼女を下ろしてくれた。
 地に足がつくと、ほっと息をついた。

 男の子は驚きと喜びが入り混じった顔で朱鳥と恭匡を見ている。
 朱鳥は思わずふふっと笑った。

「はい、どうぞ」
「ありがとう!」
 男の子はうれしそうに答える。その姿を見るだけで癒される。
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