【書籍化】偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
一緒に映画を見てからカフェに入り、人目につかない奥の席に座った。
「シャインマスカットのケーキ……でもチョコケーキも捨てがたい」
メニューを見て、朱鳥は悩む。
「両方頼んで俺と半分ずつにしよう」
朱鳥は目をきらめかせ、それからハッとした。
「そんな、悪いです」
「遠慮するなよ。つきあってるんだから」
朱鳥は恥ずかしくてメニューで顔をかくした。
スマホのメッセージでも彼は必ず照れることを伝えて来た。
綺麗な月が出てる。一番美しいのは君だけど。
おいしそうなレストランを見つけたから一緒に行こう。君とならなんでもおいしだろうけど。
食べ物なら胸やけしそうな言葉に、朱鳥の胸は高鳴る一方だった。
結局、ケーキセットを二つ、セットドリンクはアイスコーヒーを頼んだ。
そうして映画の感想を言い合う。
「あのシーン良かった。彼が命がけで助けにくるところ」
朱鳥がご機嫌で言うと、彼は皮肉な笑みを浮かべた。
「現実的じゃないな。さっさと警察を呼んでいれば、もっと早く解決した。ストーリーを盛り上げるための展開なら作成側が未熟だ」
「現実と虚構を一緒にされても」
「虚構を支えるのは現実だぞ?」
笑うように言われ、朱鳥はすねて横を向く。