【書籍化】偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
「今度は君の番だろ」
 挑戦的に見つめられ、仕方なく差し出した。
 彼は優雅に食べ、朱鳥を見つめて唇をぺろりとなめる。妙に官能的で、朱鳥は頬を染めて目をそらした。

 恭匡はさりげなく車道側を歩いてくれたし、いつのまにか朱鳥が好きそうなカフェを探してくれていた。段差につまづいたときは抱き留めてくれて、心臓が爆発するかと思った。
 こんなに魅力的で良い人なのに、誘拐だなんて。

「聞いてもいい?」
「答えられることなら」
 彼は微笑して答える。
 朱鳥は迷った。直球で聞くのは、さすがにためらわれた。

「外交官ってどんな仕事?」
「相手国に日本をわかってもらうための仕事……だけど、知りたいのはそうじゃないよね?」

「漠然としすぎたね。質問変える。やっぱりみんな英語は話せる?」
「当然だな」
「ほかの外国語も?」
「そういう人が多いな。俺はスペイン語を勉強した」

「どうして?」
「修学旅行で行ったスペインが楽しかったし、スペイン語は中国語に次いで母語にしている人が多いから。英語は三番目。資料によって前後しているけどね。外交で使うのは英語が多い」

「二番目がスペイン語なのが意外」
「大航海時代の名残だよ。あちこち征服してたからね」
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