【書籍化】偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
急いで家に帰った朱鳥は、ノートパソコンにペン型カメラを接続した。
動画を読み込み、編集する。
切り貼りはせず、通行人と迷子にぼかしをかけていく。
音声はそのままにした。
そのほうが訴求効果が高くなる気がしたから。子どもの名前だけは隠した。
交番に着いて、母親に引き渡すところまでで切った。
翌日、朝一で出社して会社のサイトに動画をアップした。
編集長には許可をとっていない。
誘拐疑惑動画にもリンクを張り、タグで関連付けをした。
誘拐疑惑の真実! カメラが捉えたあの外交官の真の姿! とタイトルをつけた。
「この動画は私が撮影しました。同僚にデータを盗まれ、悪意ある編集でアップされました。実際には迷子を警察に届けていました。これが真実です」
動画にそうコメントを付け、自分の名前を記名した。
閲覧数は急激に伸びた。
コメント欄は怖くて見られなかった。
どうか、お願い。
朱鳥は祈る。
ネットは悪意も善意も広がるのも早い。
お願い、良い方向に広がって。彼を助けて。
次は自分が炎上のターゲットになるだろう。それでもいい。彼の無実を晴らせるなら。
契約更新は無理だろう。とんでもない裏切りを働いたのだ。満了前に契約解除、それどころか損害賠償請求だってありえる。