【書籍化】偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
海外の女の子の動画だった。八歳くらいだろうか。ピンクのワンピースを着て、金茶の髪にリボンを結んでいる。
「スペイン語で話してます。英語の字幕がありますけど、わかります?」
「まったく」
「通訳しますね」
「わかるの!?」
「母がチリの出身でスペイン語なんですよね」
ほかの同僚も集まって来た。
再生すると、こんにちは、と少女が挨拶をして話し始めた。凛子がそれを訳する。
「こんにちは。私はエイベリー・メレロ・モラレスです。アメリカにいます。驚くべき動画を見つけたので、私も動画を上げることにしました」
女の子はいったん言葉を切った。撮影している人を見たのだろう、頷いて続ける。
「私はエカルダル共和国に住んでいました。パパはその国の議員で、大臣です。パパは毎日、私を叩きました。私は辛くて、毎日泣いていました」
エカルダル共和国。
その単語に、朱鳥は震えた。
「本当のママは小さい頃に天国に行きました。二番目のママは、パパと一緒に私を叩きました。お願いしてもやめてくれませんでした」
虐待を受けていたのか、と心が苦しくなる。
「あるとき、パパと二番目のママは私を置いて旅行に行きました。食べものがなくて水も出なくなって、私は死にそうになりました。日本人のお兄さんがガラスを割って入ってきて、連れ出してくれました」
朱鳥は目を丸くして少女を見た。
その日本人は、もしかして。
「スペイン語で話してます。英語の字幕がありますけど、わかります?」
「まったく」
「通訳しますね」
「わかるの!?」
「母がチリの出身でスペイン語なんですよね」
ほかの同僚も集まって来た。
再生すると、こんにちは、と少女が挨拶をして話し始めた。凛子がそれを訳する。
「こんにちは。私はエイベリー・メレロ・モラレスです。アメリカにいます。驚くべき動画を見つけたので、私も動画を上げることにしました」
女の子はいったん言葉を切った。撮影している人を見たのだろう、頷いて続ける。
「私はエカルダル共和国に住んでいました。パパはその国の議員で、大臣です。パパは毎日、私を叩きました。私は辛くて、毎日泣いていました」
エカルダル共和国。
その単語に、朱鳥は震えた。
「本当のママは小さい頃に天国に行きました。二番目のママは、パパと一緒に私を叩きました。お願いしてもやめてくれませんでした」
虐待を受けていたのか、と心が苦しくなる。
「あるとき、パパと二番目のママは私を置いて旅行に行きました。食べものがなくて水も出なくなって、私は死にそうになりました。日本人のお兄さんがガラスを割って入ってきて、連れ出してくれました」
朱鳥は目を丸くして少女を見た。
その日本人は、もしかして。