【書籍化】偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
「あのお兄さん、ママと友達だったんだって。ママの話、聞きたいな。アメリカに来てくれたらいいのに」
 少女は不満そうに口をとがらせた。
 それから、笑顔になった。

「私の話は終わり。お兄さん、助けてくれてありがとう。私はグランパとグランマと一緒にいて、幸せよ」

 動画はそこで終わっていた。
 朱鳥はへなへなと床に座り込んだ。

「大丈夫ですか?」
 凛子が驚いて聞いてくる。
「……ちょっと力がぬけて」

 なんていうことだろう。
 こんな形で彼を庇う人が現れるなんて。

「これ、すごい勢いで再生が伸びてますよ。コメントもすごい。礼儀正しい日本人が誘拐なんてするわけないと思ってた! 日本人すげえ! だって。この前までバッシングしてたくせに」
 どうでもいいことのように凛子が言う。

「うちの社でも誘拐否定動画を出してて良かったな。なかったら、炎上じゃすまなかったよ」
 同僚が言い、周りが頷きあった。
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