【書籍化】偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
「そうだ、テレビ!」
 部屋に一つだけあるテレビを、凛子がつける。
 ちょうどワイドショーがやっていて、この動画が放送されていた。

『——ということですが、外務省からは正式な発表はありません』
『少女の安全のために外務省は沈黙していたんでしょうかねえ』
『名前もわかってませんからね、早計なことは言えないでしょう』
 テレビの中で、人々が口々に言い合う。

『急展開ですね。誘拐疑惑については、実は迷子を保護していただけだという動画もあり、テレビ局にも目撃者から連絡がありました。所轄の警察に確認をしたところ、実際にその時間帯に迷子の保護があったということです。保護者を名乗る方からの連絡もありまして……』
 アナウンサーが説明を続ける。

 古倉さん、名乗り出てくれたんだ。
 朱鳥の胸が熱くなる。
「これ……完全に世間の流れが逆転しますね」
 凛子が言い、朱鳥は安堵で泣きそうに顔を覆った。
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