【書籍化】偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
朱鳥は休憩をもらい、外に出た。
みんなに申し訳なかったが、意外にも凛子が行ってこいと言ってくれた。電話は五時で自動応答に切り替わったから大丈夫、と。
恭匡とひと気のない喫茶店に入る。
注文したアイスコーヒーが届くまで、二人は無言だった。
届いたコーヒーにミルクを入れてかきまわし、一口飲む。
「……まず」
「この状態がよくわかる店だな」
一口飲み、恭匡は苦笑いした。
それから大きく息を吐いて、朱鳥に頭を下げた。
「君を傷付けてすまない」
朱鳥は驚き、あのメッセージのことだろう、と気が付く。
「怒って当然だから」
「怒ったわけじゃない」
怒ってないならどうして。
思うが、それを聞くより優先しなければならないことがある。
朱鳥は頭を下げた。
「私こそごめんなさい。最初、スクープのためにあなたを利用しようとしました。やめたけど、管理が甘くてあの映像を使われました。私のミスです。事務員も嘘です。本当にごめんなさい」
「いいよ」
「そんなあっさり、いいよって」
そんなの、心が広すぎやしないか。