【書籍化】偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
「ドレス、買ってもらってごめんね。美容室とか全部準備してもらって」
「どうってことないよ。綺麗な君が見られるのがご褒美だ」

 それを言うなら、と朱鳥は照れながら彼を見る。
 彼がびしっと上質なスーツを着ている姿は朱鳥にはご褒美だ。新鮮だし、色気がいつもの十割増しで、くらくらしてしまう。

 パーティーの冒頭には大統領の目の前で、恭匡とエイベリーの感動の再会が行われた。
 エイベリーは泣きながら喜び、恭匡は優しく頭を撫でて慰めてあげた。

 彼の元上司も来ていた。アメリカで大学教授になっていた。再会を喜び、恭匡の冤罪が晴れたことを喜んでくれた。

 その後の歓談の時間では大統領が恭匡に挨拶に来て、びびった。
 朱鳥は恋人として紹介され、握手までしてしまった。ひきつりながら、なんとか笑顔を作って対応した。

「大統領に対しても平気でいられる恭匡さんはすごい」
「すごく緊張したよ。表に出さないようにしてるだけ」
「それがすごいよ」
 朱鳥がため息をついたときだった。

「ヤスマサ!」
 かわいい声がして、金茶の髪の女の子が走って来た。エイベリーだ。水色のドレスがかわいらしい。

「会エテ、ウレシイ」
 片言の日本語で言い、恭匡に抱き着く。
恭匡はエイベリーと目線と合わせるために片膝をついてしゃがみ、仲良くスペイン語で話す。

 しばらくして、エイベリーは怒ったように腰に手を当て、頬をふくらませた。
 恭匡が彼女の頭を撫でると、仕方ないわね、と言わんばかりに両手を広げ、小走りに駆けて行った。その先に祖母らしき女性がいて、彼女を抱き留めていた。
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