【書籍化】偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
「なにを話したの?」
「エイベリーにプロポーズされた」
 恭匡は苦笑しながら立ち上がる。

「はあ!?」
「俺には心に決めた人がいるからごめんね、と謝った」
「そ、そうなんだ」
 朱鳥はそれしか言えなかった。
 それって私? なんて図々しい気がして聞けない。

 演台に大統領が立ち、マイクでなにかを言って外を示す。
「彗星が見えるらしいよ。行こうか」
「彗星?」
 係員が外に誘導しているので、それに従って外に出た。

 青い芝生が広がり、頭上には星空が広がっている。
 その中に透けるように長く尾をひいた、青白い星があった。

「すごい、初めて見た!」
「肉眼で見えるのがすごいな」
 天体写真と同じように尾をひいて下向きに流れているかようだ。なのに空に静止していて、不思議な感じがした。

「朱鳥さん」
 改まった恭匡の声に、朱鳥は彼を見た。
「俺は外交官として復帰することが決まった」
「すごいじゃない! おめでとう!」

「奇跡だよ。もう無理だと思っていた。君のおかげだ」
「私はなにも」
 朱鳥は照れて夜空を見上げた。彗星は相変わらず輝いている。
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