【書籍化】偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
「こっちを見て」
 言われて、再度彼を見る。彼は真剣な顔をしていた。
「朱鳥さん、俺と結婚してほしい」
 朱鳥は息を呑んだ。

「外交官はあちこちに転勤がある。悪い環境に行くこともある。結婚したら大変なこともたくさんあるだろう。だけど、俺は君と幸せになりたい。君の夢をかなえるのに国境はないよね? 海外に行くのはライターには強みになる気がするけど、どうかな」
 声もまた真剣で、朱鳥は顔をくしゃっとさせた。

「悪いこともちゃんと言ってくれる、そういう誠実なところも好き」
 朱鳥は泣き笑いで言う。

「仕事なんてどこでもできるし、転勤したらネタが増えたってきっと喜ぶわ」
「つまり?」
 うれしそうに、彼は先を促す。

「……よろしくお願いします」
 その答えに、恭匡は朱鳥を勢いよく抱きしめた。
 顔が至近距離に近付き、朱鳥は慌てる。
「人に見られるよ」
「みんな彗星だけ見てるから」

 恭匡は朱鳥に口づける。
 熱く深い口づけに、朱鳥はただ彼を受け入れる。
 彼の前では真夏のアイスクリームのように、ただとろけていくのみだ。

「今夜は……君のすべてをもらうよ」
 甘く囁かれ、朱鳥は赤くなった。
 彗星は青白い尾を引きながら、恋に墜落するように夜空に輝いていた。


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