【書籍化】偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
「おまわりさんに家族を探してもらおうね」
 彼の声は優しかった。が、女の子はあとじさった。
 彼はとっさにその手を摑まえる。
 直後。

「ぎゃああああ!」
 女の子がすごい勢いで泣きだした。周囲がぎょっとして三人を見る。
 彼は問答無用で彼女を抱き上げる。

「すまない、しばらく辛抱してくれ」
 女の子に声をかけ、朱鳥に頷いて促す。
 朱鳥は頷き返し、駅前の交番に一緒に行く。道中、大丈夫だよ、と女の子に声をかけ続けた。

 交番には女性がいて、警察官に必死になにかを訴えていた。
 もしかして、と思いながら朱鳥は扉をスライドさせた。

「あの、迷子なのですが」
 朱鳥が言う。
 女性は少女を見て声を上げる。
「まりえ!」
 女性が伸ばす手に、男性は慎重に少女を受け渡す。

 少女は彼女に甘えるように抱き着いて泣いた。
「迷子を届けに来たんですが、あっさり保護者が見つかったようですね」
 男性はほっとしたように言う。
「よかったです」
 警察官が笑顔で答える。
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