【書籍化】偽装告白から始まる悪徳外交官の溺愛
「ありがとうございます。ちょっと目を離した隙にいなくなってしまって」
 女性は半泣きだった。

「ぜひお礼を。せっかくのデートをお邪魔しちゃったでしょう?」
 女性は言い、スマホでどこかへ電話を始める。

 デート!?
 朱鳥は動揺してなにも言えなかった。
 男性も苦笑してなにも答えない。
 電話を切った女性は二人に顔を向けた。

「駅ビルの四十階にあるティーラウンジに予約を入れました。私の名前、古倉美幸(ふるくらみゆき)でとってあります。支払いはこちらでしますから。あ、このあとご予定があったかしら。私ったら確認もせずに。改めたほうがいいかしら」

「予定はないですけど……」
 朱鳥は困惑した。そこは会員制の高いティーラウンジだった気がする。

 男性はにっこりと笑顔を見せた。
「お言葉に甘えさせて頂きます。ありがとうございます」
「ありがとうございます」
 とりあえず朱鳥も礼を述べた。

 朱鳥たちは交番を出た。女性は頭をぺこぺこと下げて二人を見送った。
「どうします?」
 朱鳥がたずねると、男性は苦笑した。

「よかったらご一緒に。せっかくのご厚意だから」
「そうですね」
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