君に初恋が届くまで
竈山市立高等学校、略して竈高は、公立ながらも偏差値も高く、特に外国語に力を入れている学校でもあった。それに加えて、文武両道をスローガンに掲げており、部活動でも全国大会常連の有名な高校である。
校門を通り校舎を見上げれば、"女子バレー部 全国大会準優勝""男子サッカー部 全国3位"など錚々たる成績がこれでもかというぐらいに主張している。
同じように真新しい紺色のブラザーを着た生徒達が校舎を見上げ、目を輝かせていた。皆、この学校に憧れて今日を迎えたのだろう。芽依もそのうちの一人だった。どうしてもこの高校へ行きたかった。だけど、理由は少し違う。
この町にまだいるかもわからない、初恋の相手"ゆうくん"にもしかしたら会えるかもしれない。そう思いこの学校を選んだのだ。
両親は初めは猛反対。それもそうだ、県を跨ぎなお家から2時間以上かかるこの高校へなぜ行きたがるのか、理解出来なかったらしい。そこをあれやこれやと理由をつけ、おばあちゃんの家から通わせてもらうことでなんとかまとまった。
「説得した甲斐、あったなぁ」
綺麗な校舎、期待に満ち溢れた表情で歩く新入生、そしてその心を映したかのような青空を見ながら、芽依は独り呟く。
ドンッ
しばらくこの空気を味わいたく立ち止まっていると、背中に何かが当たった。それはすぐ誰かのカバンだと理解した。驚いて持ち主を見れば、ちょうど振り返った不機嫌そうな男子生徒と目が合った。謝られるものだと思っていた芽依だが、この後彼の口から出てきた言葉に驚愕する。
「邪魔なんだけど」
「………へ?!」
それだけ伝えた彼はスタスタと去っていった。
「え、何今の!初対面であれはなくない?!」
確かに突っ立ってた私も悪いけど!と、思いながらもさっきまでの幸せな気分をぶち壊され腹が立ってきた。
「新入生のみなさん、そろそろ入学式が始まります!外にいる皆さんは急ぎ体育館の中へ移動をお願いします!」
一気に地獄に落とされたような気分の私は、先生の声に従い足取り重く体育館の中に入った。
こんなはずじゃなかったのに…と思いながら周りを見渡す。先程の嫌味な男子生徒は見当たらないので、新入生ではないのか、と安堵する。
「(あんな奴と同じクラスになったりしたら最悪だもんね)」
ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間だった。
「新入生代表、宮永侑!」
「はい」
ゆう、という名前に反応する。
司会の合図で一人の男子生徒が壇上へ上がる。
その彼から目を離さなかった。
「どうして……気づかなかったんだろう」
その彼は、さっきぶつかった嫌味な奴だった。だが、その顔をよく見ると……
「"ゆうくん"だ……」
真っ黒の髪、少しうざそうな前髪、白い肌、きりっとした目、いかにも本も好きそうだし、そして……
「Hello,I'm Yu Miyanaga……」
突然の滑らかに滑るような英語での挨拶。"ゆうくん"は帰国子女、英語が話せた。
きっと彼だ、と芽依は確信した。
侑なんて名前、探せばいくらでもいるだろうし、英語が話せる人だってたくさんいるだろう。顔を幼い頃しかしらない。でも、理屈ではなかった。直感で彼だと思ったんだ。さっきの嫌味な発言はもう頭にはなかった。ようやく会えるんだ、その事でいっぱいいっぱいだった。
校門を通り校舎を見上げれば、"女子バレー部 全国大会準優勝""男子サッカー部 全国3位"など錚々たる成績がこれでもかというぐらいに主張している。
同じように真新しい紺色のブラザーを着た生徒達が校舎を見上げ、目を輝かせていた。皆、この学校に憧れて今日を迎えたのだろう。芽依もそのうちの一人だった。どうしてもこの高校へ行きたかった。だけど、理由は少し違う。
この町にまだいるかもわからない、初恋の相手"ゆうくん"にもしかしたら会えるかもしれない。そう思いこの学校を選んだのだ。
両親は初めは猛反対。それもそうだ、県を跨ぎなお家から2時間以上かかるこの高校へなぜ行きたがるのか、理解出来なかったらしい。そこをあれやこれやと理由をつけ、おばあちゃんの家から通わせてもらうことでなんとかまとまった。
「説得した甲斐、あったなぁ」
綺麗な校舎、期待に満ち溢れた表情で歩く新入生、そしてその心を映したかのような青空を見ながら、芽依は独り呟く。
ドンッ
しばらくこの空気を味わいたく立ち止まっていると、背中に何かが当たった。それはすぐ誰かのカバンだと理解した。驚いて持ち主を見れば、ちょうど振り返った不機嫌そうな男子生徒と目が合った。謝られるものだと思っていた芽依だが、この後彼の口から出てきた言葉に驚愕する。
「邪魔なんだけど」
「………へ?!」
それだけ伝えた彼はスタスタと去っていった。
「え、何今の!初対面であれはなくない?!」
確かに突っ立ってた私も悪いけど!と、思いながらもさっきまでの幸せな気分をぶち壊され腹が立ってきた。
「新入生のみなさん、そろそろ入学式が始まります!外にいる皆さんは急ぎ体育館の中へ移動をお願いします!」
一気に地獄に落とされたような気分の私は、先生の声に従い足取り重く体育館の中に入った。
こんなはずじゃなかったのに…と思いながら周りを見渡す。先程の嫌味な男子生徒は見当たらないので、新入生ではないのか、と安堵する。
「(あんな奴と同じクラスになったりしたら最悪だもんね)」
ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間だった。
「新入生代表、宮永侑!」
「はい」
ゆう、という名前に反応する。
司会の合図で一人の男子生徒が壇上へ上がる。
その彼から目を離さなかった。
「どうして……気づかなかったんだろう」
その彼は、さっきぶつかった嫌味な奴だった。だが、その顔をよく見ると……
「"ゆうくん"だ……」
真っ黒の髪、少しうざそうな前髪、白い肌、きりっとした目、いかにも本も好きそうだし、そして……
「Hello,I'm Yu Miyanaga……」
突然の滑らかに滑るような英語での挨拶。"ゆうくん"は帰国子女、英語が話せた。
きっと彼だ、と芽依は確信した。
侑なんて名前、探せばいくらでもいるだろうし、英語が話せる人だってたくさんいるだろう。顔を幼い頃しかしらない。でも、理屈ではなかった。直感で彼だと思ったんだ。さっきの嫌味な発言はもう頭にはなかった。ようやく会えるんだ、その事でいっぱいいっぱいだった。