君に初恋が届くまで
クラス分けが発表された瞬間、まず見るのは自分の名前。そして次に見るのは友達や好きな人の名前。例の如く芽依もあの新入生代表の名前を探した。
「……っ!一緒、だ」
同じ列に名前が書かれているのを見て、嬉しさの余り飛び上がりそうになったが、心の中で叫ぶだけに留めておいた。周りを見れば友達同士、一緒だの離れただの言い合う生徒もいる。それを横目に、喜びを分かち合える友人がいない事を少し寂しく思った。
・
教室に入り指定の席につけば、担任の鈴木先生が今日これからの予定を話し始める。
「今日は二限までなんだが、帰りに部活動の紹介をかねたビラ配り……まぁつまり勧誘が校庭で行われる。好きなだけ見て回ってくれて構わないぞ。あと、うちの学校は何かしらの部活に絶対入ることになっているからな」
よろしく頼むよ、と言った鈴木先生は、いかにも爽やかという感じの先生で、後から聞くところによれば、女子にも男子にも非常に人気のある先生だ。
だがしかし、芽依はそれどころではなかった。
宮永侑……いや、"ゆうくん"にどうやって話しかけようか頭の中で何パターンも想像していた。
「(久しぶりだね、ゆうくん……ゆうくん?ゆうくん!あー、どのテンションで話しかければ……)」
「……わ、…かわ、春川!!!」
「っ?!!ふぁい!!!」
突然大きな声で名前を呼ばれ、変な声が出てしまう。周りからくすくすと笑う声も聞こえ、恥ずかしさのあまり顔を下に向けた。
「入学早々ぼーっとされちゃ困るよ?今日から高校生なんだから、気を引き締めような!」
「はい……すみません」
チラッと宮永侑の方を見れば、こちらに見向きもせず頬杖をついたまま気だるそうにしていた。
「(ほんと、ついてないな)」
深いため息と共に愚痴をもらす。悪い印象を持たれたのではないかと不安がよぎる。しかし、"ゆうくん"なら私だと知れば優しく迎えてくれる、という自信があった。なぜなら、"ゆうくん"と芽依は結婚を約束した仲だったからだ。
____そう、あれは私が引っ越す事が決まり落ち込んでいた日の事だった。
「ぐすっ、ぐす……っ」
____この町から離れるのが嫌すぎて大泣きしていた私にゆうくんはそっとハンカチを私に渡してくれた。
「泣くな」
「でも、でも、」
「また会える。絶対」
「ほんと?」
「ほんとだよ!じゃあこうしよう。今度会えたら、二度と離れれないように……」
"僕たちは結婚するんだ"
こう言われたら頷くしかなかった。小指を重ねて約束をした。あれから10年、擦り切れるほど思い出しては胸をときめかせた。
____だから大丈夫、私が芽依だよって言えばいい。それだけのこと。
休憩時間になった瞬間、意を決して席を立った。
「あの、宮永侑君……いや、ゆうくん!」
参考書を読んでいた彼は、ゆっくりと頭を上げ目が合う。
「私、芽依!芽依だよ!帰ってきたんだよ!」
きっと彼は覚えくれている、当然のようにそう思っていた。
ゆっくりと立ち上がった彼に、何をするつもりかと淡い期待をこめて見上げた。
だが、予想とはいつも裏切られるものだということを体感させられる。
「……あんた誰?うざいんだけど」
淡い期待も粉々に砕けちり、美しい思い出諸共奈落の底へと落ちていった。
「……っ!一緒、だ」
同じ列に名前が書かれているのを見て、嬉しさの余り飛び上がりそうになったが、心の中で叫ぶだけに留めておいた。周りを見れば友達同士、一緒だの離れただの言い合う生徒もいる。それを横目に、喜びを分かち合える友人がいない事を少し寂しく思った。
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教室に入り指定の席につけば、担任の鈴木先生が今日これからの予定を話し始める。
「今日は二限までなんだが、帰りに部活動の紹介をかねたビラ配り……まぁつまり勧誘が校庭で行われる。好きなだけ見て回ってくれて構わないぞ。あと、うちの学校は何かしらの部活に絶対入ることになっているからな」
よろしく頼むよ、と言った鈴木先生は、いかにも爽やかという感じの先生で、後から聞くところによれば、女子にも男子にも非常に人気のある先生だ。
だがしかし、芽依はそれどころではなかった。
宮永侑……いや、"ゆうくん"にどうやって話しかけようか頭の中で何パターンも想像していた。
「(久しぶりだね、ゆうくん……ゆうくん?ゆうくん!あー、どのテンションで話しかければ……)」
「……わ、…かわ、春川!!!」
「っ?!!ふぁい!!!」
突然大きな声で名前を呼ばれ、変な声が出てしまう。周りからくすくすと笑う声も聞こえ、恥ずかしさのあまり顔を下に向けた。
「入学早々ぼーっとされちゃ困るよ?今日から高校生なんだから、気を引き締めような!」
「はい……すみません」
チラッと宮永侑の方を見れば、こちらに見向きもせず頬杖をついたまま気だるそうにしていた。
「(ほんと、ついてないな)」
深いため息と共に愚痴をもらす。悪い印象を持たれたのではないかと不安がよぎる。しかし、"ゆうくん"なら私だと知れば優しく迎えてくれる、という自信があった。なぜなら、"ゆうくん"と芽依は結婚を約束した仲だったからだ。
____そう、あれは私が引っ越す事が決まり落ち込んでいた日の事だった。
「ぐすっ、ぐす……っ」
____この町から離れるのが嫌すぎて大泣きしていた私にゆうくんはそっとハンカチを私に渡してくれた。
「泣くな」
「でも、でも、」
「また会える。絶対」
「ほんと?」
「ほんとだよ!じゃあこうしよう。今度会えたら、二度と離れれないように……」
"僕たちは結婚するんだ"
こう言われたら頷くしかなかった。小指を重ねて約束をした。あれから10年、擦り切れるほど思い出しては胸をときめかせた。
____だから大丈夫、私が芽依だよって言えばいい。それだけのこと。
休憩時間になった瞬間、意を決して席を立った。
「あの、宮永侑君……いや、ゆうくん!」
参考書を読んでいた彼は、ゆっくりと頭を上げ目が合う。
「私、芽依!芽依だよ!帰ってきたんだよ!」
きっと彼は覚えくれている、当然のようにそう思っていた。
ゆっくりと立ち上がった彼に、何をするつもりかと淡い期待をこめて見上げた。
だが、予想とはいつも裏切られるものだということを体感させられる。
「……あんた誰?うざいんだけど」
淡い期待も粉々に砕けちり、美しい思い出諸共奈落の底へと落ちていった。