瀬渕さんは、総務部長を愛したい。


「瀬渕さん、すみません。これ、部長に見せるのを忘れていたんですけど、今からでも見せた方が良いですかね?」
「…………」


不穏な門倉さんの言葉。
その言葉に目を細めつつ…静かに問う。


「……何を忘れていたの…」
「B社株主総会の案内です」
「…総会はいつ?」
「明日ですね」
「………」


株主総会の案内!? 何で貴方が持ってるの!?


「あ…明日はまずいでしょ!! 何で隠していたの!?」
「隠していたんじゃなくて、忘れていました」
「それがもっと問題!!」


門倉さんと一緒に部長の元へ行き、案内を差し出しながら深く頭を下げた。



何で関係のない私まで頭を下げなければならないのか、全く理解ができないが。

これも先輩の仕事。



後輩のミスは先輩のミス…………なぁんて、やってられるかよ!!!!


百発百中ミスをする年上の後輩のサポートなんて、本当は願い下げだっ!!!



「…あぁB社ね。いや、珍しく案内が来ていないと思っていたから、先方に問い合わせている。明日も出席予定だよ。……ったく、君が隠し持っていたとはね。大事なものだから、今後はすぐ俺に見せること」
「隠していません。忘れていました」
「同じことだ!! いちいち訂正するなぁぁぁ!!!!」



門倉さんはやる気が無い。
覇気も無い。
悪びれもしない。


いつもどこか気だるげで、任された仕事も期限ギリギリに処理をして、間違っていて、差し戻しされる。


津村さんもメンタルが最強なのではと思っているが…。
門倉さんはそれを上回るくらい最強だと思う。



仕事をミスして、やる気も無いなんて。

なんで解雇されないのか、最近はそんなことも気になっている…。



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