瀬渕さんは、総務部長を愛したい。
一線を越えて
「頼まれていた書類、完成しましたぁ~」
「お、ありがとう。桐谷くん」
一般社員 桐谷稔、29歳。
こちらも私より年上の後輩。
仕事はできるから、部長からも頼まれ事をよくされているのだけれど…。
彼は、詰めが甘い。
「…ん? 桐谷くん。この書類の数字、半角と全角が混ざっているんだけど」
「え、そうですか?」
「……いや、そうですかじゃなくて。そうだって言ってんの。どっちかに統一してくれない?」
「おかしいな…。揃えたんですけど」
「だから揃っていないって言ってんだろ!? 大人しく直せよ!!!!!!」
「あ、はい」
…面白い。
仕事ができるのは良いが、絶対に自分の非を認めない。
自分は間違っていない。
自分は正しい。
そんなスタンスで仕事をしている。
「桐谷くん、これもう続いているからね。気を付けてよね」
「わっかりました~」
「…本当に分かったんかいな…」
今日もまた頭を抱える部長。
もう、頭を抱えない日を見たことが無い。