瀬渕さんは、総務部長を愛したい。


「……」
「……」


訪れる静けさ。


社内には…もう私たちしかいない。
そんな現実に、胸が高鳴る。



「………部長」



行動に起こすのは簡単だった。


少し潤んだ目をしている、椅子に座ったままの部長。
背後からその体に抱きつき、そっと手で唇に触れた。

何も言わず、抵抗もしない部長。
優しく触れ続けていると次第に部長の手も動き、私の腕に触れ始める。


お互い、何も言わず。
ただ、触れることのできる箇所に、無言で触れ合う。


「………」


唇に触れ続けていると、口が開き…その指を甘く噛まれた。
何だか悪いことをしている気がするが、部長とのこの甘い時間を壊したくなくて、きつく目を閉じる。

目を閉じると意識が指先に集中して、ドキドキして…苦しくて…少しだけ涙が滲んだ。




……部長…、市野部長のことを、癒し、助け…愛したい。

辛そうな部長を、私の手で…。




「…瀬渕さん、一旦離れて」
「……」


言われた通り背中から離れると、部長は椅子から立ち上がり、正面から私を抱き締めた。


そして見つめ合い、そっと重ねられる唇。

何度もくっつけては離して…。
次第に舌を絡ませる。



「………」
「………」



私も部長も、何も言葉を交わさないまま床に倒れ込んだ。
そのまま再び唇を重ね、舌を絡める。


息が上がり、顔が火照っている部長のその姿に眩暈がした。


「……はぁ…っ」


部長のネクタイに手を掛け、ゆっくりと解く。
すると部長も同じように、私の胸元から制服のリボンを取り除いた。



「………」




もう、どちらも、止められない。




理性が飛び、もう欲求を抑えられない私たち。




誰もいない会社で

お互いの欲求のまま。




“最後の最後まで” 、無言で身体を重ね合った…。




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