瀬渕さんは、総務部長を愛したい。
「かんぱーーい!!」
部長が言った通り、本当に実現した『総務飲酒会』。
個室がある焼肉屋で、6人が思うままにお酒を飲む。
「いや、あれよ。津村くん…君は、勝手なことしたらダメだよ、マジで!! 桐谷くんは…自己チェックをしなさすぎ!! 事前に見てから持って来ること!! 門倉くんはやる気が無い上に適当すぎる!! やる気が無いのはもう諦めたけどさ、せめて丁寧に仕事をしてくれないかな!? 渡邊さんは単純にドジっ子だね!! もう少し慎重にいこうか!」
1人1人への思いが爆発する市野部長。
開始1時間経たないうちに、部長の前には空きグラスが5本…。
かなりのハイペースでお酒を飲んでいるみたい…。
「僕達ばかり悪くって、瀬渕さんには何も言わないんですか!? 贔屓ですよ!!」
こちらもハイペースな津村さん。
両手にグラスを持って叫んでいるけど……そうなるにはまだ早くない!?
「あぁ!? つまらんお前らを瀬渕さんが支えてくれてんだろ!!! 彼女には言うことがねぇよ!! マジで見習えよな!!!」
「贔屓です、贔屓!! 市野さんの贔屓~!!!」
「津村お前、表出ろコラ!!!」
「上等ですよ!!! やってやります!!!」
「待って待って待って」
何でそうなるの!?
ヒートアップしている部長と津村さんの間に入って仲介をする。
「2人とも落ち着いて下さい!!」
そして部長と津村さんを引き離し、他の人との会話を促した。
「………」
結局、こうやって仲介をするのも私。
マイペースにお酒を飲んでいるだけの桐谷さん。
呆然と眺めている門倉さん。
どうして良いか分からず、あたふたしている渡邊さん。
“私が居なきゃ”なんて、そんな自惚れたことは言わないし思わないけれど。
それでもこの状況…。
私が居なきゃ、収拾付かないことになるのは…目に見える。
「………」
しかし…部長、飲みすぎ。
際限なく、浴びるようにお酒を飲んだ部長は…。
1次会が終わる頃には元気も気力も無くなり、普通に酔い潰れて倒れていた。