瀬渕さんは、総務部長を愛したい。


ある日の昼間。
部長が外出で不在の時に、事件が起こった。




受付から来客の連絡が来た。

この前津村さんが勝手に対応した、A社の担当者が市野部長宛にお見えになっているとのこと。


「部長宛ですから、不在をお伝えしましょう。また改めてアポイントを取って頂くよう、お伝えしてきます」


総務部員全員に聞こえるようにそう言うと、津村さんが目を輝かせて立ち上がった。


「待って、瀬渕さん。A社は僕が対応します!」


で…でた、津村さん。
その一言に…嫌な汗が流れ始める。


「いや、部長宛ですから。下手に対応しない方が宜しいです」
「この間の報告も僕からだったから、問題無いですよ!」


その根拠はどこから来るんだ…!!

私は必死に頭を回転させ、完璧な解決策を探る。


「待って下さい! で、では、まずは部長の不在をお伝えしてきます。そして、津村さんでも良いかを先に確認してきますから」


短い間に色々考えた結果、受付に降りている間に部長と連絡を取り、指示を仰ぐのが良いと私の中で結論が出た。



そうしよう。

そう決めたのに、ここで “総務の暴走列車” が発車する。


「お客様はお待たせするものではありません。行ってきます!!」
「あぁ!! ちょっと津村さん!!!!」


ダッシュで総務部室を飛び出した津村さん。
必死に後を追うも、足が速すぎて追い付かない。


「あーあ…もう!! 最悪っ!!!」



また頭を抱える部長の様子が思い浮かんだ。


津村さんを抑えられなかった自分を悔やむ。
今日もまた…部長に謝らなくちゃ……。



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