瀬渕さんは、総務部長を愛したい。


A社の対応から戻ってきた津村さん。
結構長いこと話したみたいで、戻ってきた頃には1時間が経過していた。


ニヤニヤと嬉しそうな様子。
何か言って欲しいのか…総務部員の顔を1人ずつ眺める。



面倒くさい人……。

そう思って気付かないふりをしていると、耳を疑う一言が聞こえてきた。



「ねぇ、A社と契約取りましたよ」
「……え?」


凄く嬉しそうに書類を眺める津村さん。


…え、待って?
この人、部長不在で、誰の指示も仰がずに契約した?



「え、ええええぇ!? 駄目ですよ津村さん!!!」
「何で?」
「何でって…取引の話を受けるのは総務部でも問題ありませんが、契約という話になると営業部も関係してきます!! 大体、部長が不在の間に独断でやっていいことではありません!!!」
「……?」


何でそんなに不思議そうな顔をしているんだ!?


…津村さん、本当にやばい。
もう暴走っていう言葉だけでは片付けられない。


大体、A社の担当者もおかしい!!
市野部長を訪ねて来たにも関わらず、対応した別の人と契約までする!?

私の感覚だと有り得ないんだけど!


「褒められませんかね?」


褒められるわけないでしょ!!

そう思うだけで、言葉には出さない。



「……はぁ」


嬉しさを隠せない津村さんを横目に、自分の席に座る。

部長が帰ってくるのが不安で、何だか頭が痛くなってきた…。



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