名門の魔法学校を首席で卒業した私、「女のくせに生意気だ」という理由で婚約破棄される〜代わりにもらってくれたのは、入学からずっと首席争いをしていた次席のライバル王子でした〜
 クローブ国王様が壇上に上がると、周りの人たちは話をやめて一斉に視線を向けた。

「皆、此度はピートモス領の開拓前進を祝う祝賀会に参加してくれて感謝する」

 皆の意識が向いたことを確かめた国王様は、正式に開会の挨拶を始める。
 次いで壇の脇に立つディルに目を向け、彼も壇上に立たせると、祝賀会の目的を今一度示した。

「長年、開拓が滞っていたピートモス領だが、我が息子のディルが兵を率いてその開拓を大きく前進させた。此度の祝賀会はその息子を讃美する意味での催しとなる。盛大に皆で英気を養っていこう」

 祝賀会の趣旨を国王様から発表してもらうと、王宮劇場の会場には一斉に拍手が広がった。
 続いてディルの挨拶の番となる。

「皆様改めまして、ピートモス領の開拓前進の祝賀会にお越しいただきありがとうございます。開拓先導者のディル・マリナードと申します」

 祝賀会に来てくれたお客さんたちが、一段と前のめりになってディルに視線を注ぐ。
 幼い頃から神童と呼ばれ続けて、稀代の天才魔術師として咲き誇ったディル・マリナードを、この機会に目に焼きつけておこうという意思を周りから感じた。
 今からそんな人物の婚約者として壇上に上がるわけだよね……。
 私は人知れず、静かに深呼吸をして気持ちを整える。

「クローブ国王からもあった通り、大きな開拓作戦に成功し、ピートモス領の開拓は著しく前進を遂げました。この勢いをとどめることなくさらなる開拓に臨んでいきたいと考えております。そして次の開拓予定地としては……」

 ディルは次回の開拓作戦の予定を話していく。
 それを興味津々な様子で周りの人たちが聞いているのを、私は緊張しながら見つめていて、やがて一通りの作戦内容がディルの口から明かされた。
 そして締めの挨拶の後に、彼はいよいよ例の話を持ち出す。

「それと一つ、私事ではあるのですが、この場を借りて皆様にご報告したいことがございます」
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